今、私の目の前で、いとたくさんの命が死んでいます。



完全体となった彼の分身たちの手により、人々は無残に押しつぶされ、殺されています。

大地には血が溢れ、死体で埋まり、足の踏み場もありません。

原型を留めていないもの、生き物であったのかもわからないものもいます。




彼、キルルは、人を殺すために造られた兵器。

そして私は、彼を制御するために造られた兵器。




いと昔、私たちは侵略兵器としてこの星に送り込まれました。

私を使いキルルを制御するはずだった兵士たちは、いと弱き人たちでした。

暴走したキルルに狂わされ、誰も信じられなくなりました。

耐え切れずに、自分の命を絶つ者もいました。逃げ出した者もいました。

逃げ出した者は、一人残らずキルルに殺されました。



しかし、その星には真の絆、友情を持つ者がいました。

彼らは私を使い、キルルを封印することに成功しました。

そして私たちは、永い眠りにつきました。

しかし、誰かが私たちの封印を壊してしまいました。



今はもう、彼を止められる者は誰もいません。

数万年の間に、この星の人たちはいと醜く変わっていました。

私は彼らの絆を試しました。

しかし誰一人、いと強き真の絆を持ってはいませんでした。

全ての人が他人を信じられず、蹴落とし、生きようとしています。

今はそれが仇になるとも知らずに。




また一人の人が胸を貫かれました。

内臓が飛び散り、血が吹き出て、また大地を埋めていきました。

私もいずれ、彼に殺されるのでしょう。

暴走し続ける彼の目には既に、いや、始めから誰も見えてはいません。

そして、この星が死ぬのも時間の問題。

今の私には、どうすることもできません。

こんないと醜き人たちを、助けたいとも思いません。

私は、審判を下す者なのですから。








私たちを造った博士は天才でした。そして、自分の星をいと愛していました。

軍のために研究を重ね、私たちを造り上げました。

彼は、自分の研究が軍のためになることを何よりも望み、

そして、軍のために生きていることをいと喜ぶ人でした。



博士は、この光景を見て何を思うのでしょうか。

絶望に飲み込まれてしまうのでしょうか。狂ってしまうのでしょうか。

それとも歓喜に満ち溢れるのでしょうか。








そういえば、いと昔に私たちが侵略兵器としてこの星に来たのと同時に、

私たちのコピーが、私たちと同じように、

あちこちの星の侵略活動に投入されていたそうです。




彼らが行った星は、どんな星だったでしょうか。




少し揺らしただけで簡単に崩れてしまう絆ばかりなのでしょうか。




それとも、何事にも揺るがない、いと美しき真の絆があるのでしょうか。




その星の私は、そんな人に出会えたのでしょうか。








そして、それから何万年も経ったこの時代に、






その星に封印されていた私が目覚めたとしたら、






あなたはその星で、永遠に朽ちる事のない、真の絆を見つけられましたか。








そんないと強き人のいる星に、私は出会いたかった。

私に与えられた感情が、そう叫んでいました。








しかし、私にはもう意味のないことです。













「な・・・なんすかこれ・・・?」
ガルル小隊突撃兵、タルル上等兵は、その星を見て唖然とした。
その星・・・もはや星とは呼べない物・・・は、
緑も水もなく、ただ荒れ果てた地が広がるだけであった。

「『惑星アルテナ7』。現在は・・・星の“死体”だ」
ガルル小隊の隊長であるガルル中尉はそう言った。
彼ら、ガルル小隊は極秘任務でこの星に来たのであった。

その任務とは、決して明かされてはならない負の遺産、
古代のケロン軍が残した最悪の兵器を、完全に消し去ること。


ドン!
宇宙船に衝撃が走る。


「緊急出動!各員予定通り作戦行動に入れ!」
『了解!!』



今はもう古代の生体兵器、キルルしかいないその地で、戦いは始まった。

「I'm Gonna SCREAM+ -Dear me-」






あとがき

「キルルはあちこちの星に封印されているらしい」
      ↓
「という事はミララも何人もいるのかなぁ」
      ↓
「でもキルル外伝には出てこなかったなぁ」
という妄想の結果な話。
あくまでもこの話に出てくるキルミラは地球にいるキルミラとは別のキルミラです。


2006年5月上旬、劇場版のキルミラにあまりのインパクトを受け思わず書いてしまった人生初のSSです。
初めて書くSSがこんなのでごめんなさい。


タイトル元ネタ … Tommy heavenly6
タイトル元ネタ発売の時期が合わないのはタイトルが後付けだから。

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