今日も人が溢れかえる、日本首都圏に存在するとある街。
今、その街のある地区のある喫茶店の1席に、
なんか頭身が明らかにおかしいというか、ぶっちゃけ頭でけぇというか、
顔色が明らかにヤベェというか、とにかくどっからどう見ても怪しすぎる2人組みが座っている。


平たく言えば、ペコポン人スーツ着用中のケロロとタママである。


「・・・ねぇ、軍曹さん?」
「・・・何でありますか?タママ二等」
「ボクたち・・・何でこんなところに来たんでしたっけ?」
「それはもちろん、ペコポン人の最新の流行を調査し、
 ガンプラ買うお金・・・じゃなくて、侵略資金を稼ぐのに利用するためであります!」
「で、これが今ペコポン人が最も注目している・・・」
「最新のモード・・・であります」
ケロロとタママは、店の中を見渡した。



「ご注文はお決まりになりましたか?ご主人様?」



「あ、じゃあ我輩はジュース!タママは?」
「ボクもジュースと、後ケーキを下さいですぅ!」
「かしこまりました、ご主人様♪」


「・・・・・・ねぇ、軍曹さぁん?」
「・・・何でありますか?タママ二等」
「これが、ペコポンの最新のモードなんですかぁ?」
「そのようで・・・ありますなぁ・・・」
ケロロとタママ、2人が今いる喫茶店は、
店員が全員コスプレをした女性で、客のことをご主人様と呼ぶ、
主に秋葉原とかに存在する、今一部の男たちに大人気の喫茶店。



平たく言えば、メイド喫茶である。

「黄色いバカンス -You are "my" master.-」

「軍曹さん、このケーキなかなか美味しいですよ!」
「ゲロッ。じゃあ我輩も一口」
ケーキをつまもうと手を伸ばすケロロ。
「あっ、これはボクの分だから食べちゃだめですよぉっ!」
咄嗟にケーキを後ろにやるタママ。
「ゲロ〜・・・ケチでありますよタママ二等」
「軍曹さんも注文すればいいじゃないですかぁ」
「いやぁ、今月ちょっとガンプラ買いすぎちゃってさぁ・・・」
ほのぼのとした会話を繰り広げているケロロとタママ。
そしてその横には、


「お帰りなさいませ、ご主人様♪」
「ケーキをお持ち致しました、ご主人様♪」
「行ってらっしゃいませ、ご主人様♪」


メイドの格好の店員の嫌にロリロリで甲高かったり甘ったるかったりな声と、彼女らを見て顔をにやけさせている色々と濃い男たちの、
抗体でもないと入り込めないようなとてもピンク色な世界が広がっていた。


「・・・なんか、近寄りたくない世界ですねぇ」
「・・・全くでありますなぁ」
「それにしても、ペコポン人の女がメイドさんの格好して、
 『ご主人様♪』って言って媚びるだけでこんなに人気が出るものなんですかぁ?」
「・・・そりゃぁ桃華殿のお屋敷に住んでるタママにとっちゃぁ、
 ペコポンのメイドなんて見慣れてるっていうかいるのが当たり前になってるだろうけど、
 一般のペコポン人、特に日本人からすれば、一昔前まではメイドなんて世にも珍しい存在だったんでありますよ」
「ふ〜ん・・・そうだったんですかぁ・・・」
自分とは別の世界の話のように流すタママ。
「・・・ペコポン人の男って、なんか単純ですね」
ニヘラニヘラ笑いながらメイドと一緒に写真撮影をしている中年男を遠目に見て、タママはあきれてそんなことを口にした。
「・・・タママ二等?それは男がする発言ではないでありますよ・・・?」
「やだなぁ、『ペコポン人の男』の話ですよぉ」
そう言ったタママは、ジュースをストローで少しすする。
「あ、ボクは軍曹さん一筋ですから、あんな風に誘惑されても大丈夫ですよ!」
「・・・え?今何か言った?」
接客するメイドを観察していたケロロは、タママの言葉を聞き飛ばした。
「・・・何でもないですぅ」



「で、軍曹さん。どうするんですか?」
「何がでありますか?」
「侵略資金稼ぎに利用するって言ってたじゃないですかぁ。
 まさか・・・本当にメイド喫茶開く気ですか?」
「そうでありますな〜・・・。
 今考えたら開くにしてもモア殿だけじゃ店員足りないし・・・。
 夏美殿や桃華殿がメイドやってくれるとは思えないでありますし・・・」
「あ!いざとなったらボクがメイドやりましょうか?」
「・・・いや、タママ男だし。
 ケロロバーガーの時我輩達出たら客いなくなったし」
「大丈夫ですぅ!モモッチのお屋敷で毎日たくさんのメイドさんたちを見てますから、
 (ボソッ)少なくともあの女よりは、上手くやれる自信があるですぅ!」
タママは“任せろ!”と胸をドンと叩いてそう言った。明るく可愛く、そして一部分のみ小声かつドス声で。
「いや、そういう事を言ってるのではないであります・・・。
 やっぱりこういうのはさ?外見とかが一番重要だしさ?」
「え〜?ボク、そんじょそこらのメイドさんよりもカワイくできる自信があるのに・・・。
 ちょっと軍曹さんも想像してみてくださいよぉ、ボクのメイド姿。あ、ペコポン人スーツはなしでですよ」
そう言われたケロロは「ペコポン人スーツなしじゃ意味ないでしょ・・・」と思いつつも、
ケロン人サイズのメイド服を着て、おすまし顔で「お帰りなさいませ、ご主人様♪」とお辞儀をするタママを思い浮かべてみた。
「・・・・・・まぁ、何らかの需要はあるかもしれないでありますなぁ」
「ね!?ね!?そう思うでしょ軍曹さん!?
 ほらぁ、もっと想像してみてくださいよぉ。お客さんは軍曹さんで・・・で、ボクが・・・」



<以下、タママの妄想を聞いている「ケロロの」脳内で流れている映像>
「ご主人様!コーヒーをお持ちしましたぁ!」
トレイにコーヒーを乗せ、見る者全てを楽しくさせるような、
まさにアイドルにふさわしい、そんな天使の笑顔(本人談)をしたメイド服のタママが、
『ご主人様』のところにとてとてと走ってやって来た。
「ご苦労様であります。コーヒーはそこに置いてくれであります」(シブイ声で)
席に座っているのは、なぜか現実よりも数段かっこ良さが増しているケロロ。
その時、
「うわっ!」(バシャッ)
タママはケロロの目の前で突然何も無いのに盛大にすっころび、ケロロに熱々のコーヒーを全部ぶっかけた。
コーヒーを頭からかぶったケロロは、
うわぁっちゃぁーーーー!!!!!
そのコーヒーのあまりの熱さのためにハードボイルドモードどころではなく、
席から飛び上がり店内を縦横無尽に、短距離走で世界新記録出しちゃえそうな勢いで走り回っている。
「あっ、ごめんなさいですぅご主人様!タママ、やっちゃいましたぁ。てへっ♪」
起き上がったタママはぶりっ子声でそう言い、
「てへっ♪」に合わせてウインク&舌を出し、右手で自分の頭をこづいてみせた。
「ってそんなことやってる場合じゃないデショ!?早く水持ってきてよ水!!
 うわっ!ちょっとヤケドになってるよこれ!どんだけ熱いんだよこのコーヒー!!」
「わ、わかりましたご主人様ぁ!」
そう言って店の奥に戻ったタママは、すぐに水が溢れんばかりに入ったポリバケツを片手で軽々と持って戻ってきた。
「えっ、ちょ、まさかタマ・・・」
「もう大丈夫ですぅご主人様!せーのっ、」
タママはそのポリバケツをしっかりと握り、振りかぶって、
どっっせぇぇぇーーーい!!!!!」(バッシャーーーン)
フルパワーでケロロに水を思いっきり浴びせかけた。


「もう熱くないですかぁ、ご主人様♪」
「・・・・・・・・・」
笑顔を絶やさないタママを見ながら、只今ビッショリと水が滴っている男ケロロは無言で立ち尽くしていた。



「・・・・・・あのさぁ、タママ二等」
現実に戻ってきたケロロが、タママに呼びかけた。
「何ですか軍曹さん?」
「何で我輩がアツアツのコーヒーとヒエヒエの水を頭からかぶらなきゃなきゃいけないワケ?」
「ほらぁ、ドジッ子メイドって人気じゃないですかぁ。
 カワイイ+ドジッ子+慌て者キャラで、お客様のハートをがっちりですぅ!」
タママはガッツポーズでそう言い切った。相当自信があるらしい。
彼の脳内でのコーヒー被りに対するケロロの反応は、ケロロが先ほど想像したものとは全く違うものだったのだろうか。
「・・・いくらなんでも、限度ってモンがあるでしょ。
 そんな目に遭ったら、少なくとも我輩なら二度とその店に行かないと思うであります・・・」
「え〜?おかしいですぅ。マンガとかだったらこれで人気者になれるハズなのに・・・」
「タママ二等、マンガと現実は違うんだからさ?
 そんなに上手く行く事はないでありますよ?」
ケロロは、諭す様にそう言った。
「・・・軍曹さんがそんな事言っても、説得力ないですぅ・・・」
タママは、思った事をそのまま呟いた。
「・・・え?今何か言った?」
「何でもないですぅ」



「さて、そろそろおいとまするでありますか」
そう言うと、ケロロは席を立った。続いてタママも席を立つ。
「で、結局メイド喫茶はやるんですか?」
「ま、それは保留っちゅーことで」
レジへと歩くケロロとタママ。
そこで、歩きながらポケットをごそごそとしていたケロロはある事に気付いた。
「・・・ゲロ?ちょっと待って?」
「どうしたんですか軍曹さん?」
「・・・あれ?あれ?ちょっと、これってもしかして・・・」
ケロロはタママの方に振り返って言った。
「・・・サイフ忘れた」
ケロロの目は半泣き状態だった。声が震えている。
「もぉ〜、しょうがないですね軍曹さん。
 僕が立て替えてあげますから」
「ゲロ・・・スマナイであります・・・」
「しっかりしてくださいよ?軍曹さん・・・」
2人は再びレジへと歩き出した。そしてレジの前にたどり着いた時、
「あっ!そうだ!」
何かを思いついたタママは突然声を上げた。既に涙は止まっているケロロが再び振り返る。
「今度は何でありますか?」
「ボクが軍曹さん専属のメイドになってあげるですぅ!!」


「・・・へ?」
レジの前で、タママは突然大声で何やら凄いことを宣言した。
ケロロのみならず、レジに立つ店員メイドまでビックリして固まっている。
「・・・ごめん、タママ二等。今なんと?」
「だ〜か〜ら〜、ボクが軍曹さんのメイドになって、軍曹さんを24時間サポートするんですぅ!
 そしたら、軍曹さんも忘れ物しないで済むし、ボクもずっと軍曹さんと一緒にいられるし、一石二鳥ですぅ!」
何か変なスイッチが入っているタママの目は、キラキラと輝いていた。
「ちょ、ちょっと落ち着くでありますタママ二等!
 別に我輩メイドなんていらな・・・」
「大丈夫ですぅ!軍曹さんがドジッ子メイドは好きじゃないってことはわかりました!
 ボク、軍曹さんの好みにあったカワイくてしっかりしたメイドになってみせるですぅ!!」
「ちょ、タママ!わかってない!!全然わかってないから!!
 我輩が言いたかった事全然わかってないでありますよタママ二等!!」
ケロロの肩をがっしりと掴んで顔をケロロの眼前まで近づけ暴走発言を続けるタママ。
離れようと手をバタバタさせながらそんなタママを落ち着かせようとするケロロ。
そしてどうしたらいいかわからず、とりあえず止まらなくなっている変なお客さんをなだめようと
手のひらを出して「どうどう」の動きをしたり店長を呼ぼうとしたりしている困り顔メイド達。
レジ前がそんな妄想と困惑のカオスに包まれていたその時、


「夏美さん!ここなんてどうですか?」
「え〜、私こういう所ってあまり好きじゃないんだけど・・・」
「たまにはいいじゃないですか!最近流行ってるって言うじゃ・・・ってあれ?」
「どうしたの小雪ちゃん・・・ってあっ!?」
「ゲロ?」
「タマ?」
聞き覚えがある声に、ケロロとタママは入り口のガラス扉の方を見た。
そこにいたのは、一緒に買い物をするために街に来て、
帰りに何か食べようと歩いていたら、このメイド喫茶を見つけた夏美と小雪。
店の外、入り口のすぐ前にいる2人は、店の中にいるケロロとタママを変なものを見る目でじっと見ていた。



「・・・何やってんの、あんたら。こんな所で」






あとがき

メイド喫茶のことなんて全く知らないのに、
テレビとぱ○ぽにの情報のみを基に書きました。ごめんなさい。

そしてもし本当に店員が狙ってコーヒーぶっかけて来るような喫茶店があったらごめんなさい。
ツンデレ喫茶はあるみたいだけど、そんなのもあったりするのでしょうか。


タイトル元ネタ … 桃月学園1年C組

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